VOL.14【ESSAY】初海のひとり言

Vol.14その道の先には

いつも同じ職場、いつも同じスーパー、いつも同じ道、いつも同じバス。閉塞感を感じないのが不思議なくらい。けれど、それにも臨界点があるのかもしれない。

台風の凶を避けるためのおこもりに飽きてきた頃。「いつもと違う場所にも行かないと身体感覚が鈍る!」。なんとも落ち着かなくなり、布団も片付けず、パジャマも着替えず、スマートフォンに入れた複数の地図アプリとしばしの間、睨めっこ。今まで全く気に止めることのなかった方角へ出掛けることを決意する。台風がつづいているのに?いや、雨が楽しいから?
厚木市に越してから忙しさにかまけて走るのを手抜きしていたのを、大雨暴風が一気に浄化しようとしている。
地図上に、一本ひょろっと伸びた、明らかに他の道とは違う何かを気にしながら。

100㍍も行かないのに、普段行かない道は子供の頃の探検気分。カルガモ親子のお散歩の如くオートバイで走る少年達の一番最後、運転免許証を取得するには若すぎると見える子が同じ年くらいのもう一人を乗せている。ん?異界へ入ってしまったかしら、と振り返った。

住宅街の雰囲気とはあまりにタイムラグが有り過ぎなお菓子屋さんが店を健在なことに驚き喜び、習字教室をひらいているお宅やレアなお稽古をやっている会社を通りすぎた先。
一見したところ一般宅の車が置かれている。その奥をよくよく眺めてみると、森へと続く階段。ようやく理解できた。これこそが、地図上にひょろっと伸びていた部分なのだ。

階段がアスファルト製なのは最初の数段。後は急な下り斜面に横木が置かれているのみ。雨に濡れた緑色の景色に心を奪われ、写真を撮るも手が滑り、スマートフォンを落としてしまう。
それでもトレイルランニングの様な楽しさに笑顔になり、「神奈川県のトトロの森」を転ばぬよう降りていく。

だが、これにはオチがあった。出口付近には、土砂災害が起きやすい場所である旨が、書かれていたのだ。台風はまだ止んでいない。暴れ気味なのは、私の頭。

嗚呼!これだから、全く。山の神様、お許しを。

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