「厚木ふたり」Vol.2

仕事が終わらないー、と朝からさけんでいる彼女に
「今日は天気もいいし、外でお昼食べようか」と声をかけると、
「いつも食べてるじゃない。外で」と相当そっけない応えがかえってきた。
「そうじゃなくて。公園とかで食べようか、って意味だよ」
…なんだ。ピクニックってこと。
きょとんとした顔で、つぶやくように彼女がそう言う。

お互い、いそいそと出かける準備をし、家からだまって歩き出したオレにちょこちょこついてくる彼女をちらっと見ると、口がとんがっている。ごきげんナナメのようなのに、それがなんだか、かわいくて、ちょっと可笑しい。

昔から神奈川県央の商業の中心として栄えてきた厚木の街は、駅を中心にまっすぐに延びる道が特徴である。昔からある酒屋さんや金物屋さんなどから、おしゃれなダイニングバーやカフェまで受け入れてくれるこの街が、とても好きだ。
彼女と一緒に暮らし始めてもうすぐ一年。この街を選んでよかったと思う。

「…ねぇ、どこに向かって歩いてるの?」と問う彼女にもうすぐでつくよ、とこたえ、角の自転車屋さんを曲がり着いたのは「厚木中央公園」。厚木市の中でも結構大きめの公園だ。

「ここのさ、タイ料理が結構美味いんだよ」
「タイ料理?」
「ほら、ワゴン車のとこ」
「…あ、おべんとがでてるー」
「たまに、タイの辛さが恋しくなるんだよ」
「結構行ってたんだもんねー、バンコク。毎年?だっけ?」
「そうそう、タイのおねーちゃんと遊ぶのに忙しくて…てコラ」
あはは、と笑う彼女について行くようにふたつ、カオマンガイを買うと近くのベンチに腰掛けた。
「わたし、バンコクに行ってからかな、鶏肉好きになったの」
「あの、鶏を焼いただけのやつも旨いよな、…なんていったっけ?」
「ガイヤーン?」
「それだ」

たくさんのママチャリ。
気持ちよさそうに日なたぼっこしているおじいさん。
みんなで遊ぶ子供たち。
ベンチに座っていると差し込む、木もれ日。
一緒にむかい合って食べる、お昼ごはん。

こういう、なんでもない日常がしあわせなのかもしれないな。

「ねぇ、つぎはどこ行く?」
と、隣からこっちを伺うように、彼女が手をのばしてきゅっと笑ってくれた。

その笑顔につられるようにふたり、また「つぎ」に向かって歩き出す。

created by Amari

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です