萩工房・小山内保夫【クリエイター紹介】

人形匠・萩工房として“わるねこ”などの個性的な招き猫の人形をつくっています。

Vol.14「〝わるねこ〟が、見つめる先。」

■一体の人形に魅せられて
『萩工房』という屋号は元々、小山内さんの師匠・堀井孝雄さんが使っていたもの。数年前に引き継ぎ、今は小山内さんが担っています。
その堀井さんに出会う前の小山内さんは、なんと運送会社のドライバーでした。ある日間違えて訪れた届け先が、鎌倉にある堀井さんの萩工房だったのです。
そこで出会った朧月夜(源氏物語の登場人物)をモデルにつくられた紙粘土細工の人形に魅せられてしまいます。それまで人形なんてほとんど興味がなかったにも関わらず、その場で購入を即決。ところが堀井さんと話をしながら見ていた値札の数字が、最初の認識より一桁多い事に気付き、買うのを断念します。
そんな小山内さんに、堀井さんは「この人形はいつでもここにいますよ。また会いに来てください」と声をかけてくれたのだとか。
それでも諦められず、翌日また萩工房へと向かい、ついに購入。そこから堀井さんに弟子入りするまで、長い時間はかかりませんでした。

■黒澤明が導いた!?出会い
「若い時から自分が何をしたいのかわからなかった。でも人形に出会う前、たまたま黒澤明監督の映画『生きる』を見ました。その中におもちゃの工場で働く少女が出てきます」
「その少女自身がつくっているウサギのぬいぐるみを主人公に見せて『あなたも何かつくってみたら』と問いかけるシーンがあるんです。なんだか私に言われたような気がして、ハッとしたのを憶えています。私も何かつくってみたい、と思っていた、そんな時に師匠の人形と出会ったんです」

小山内さんが「私にも作れますか?習いにきてもいいですか?」とたずねると、堀井さんは「作れますよ。いつでもいらっしゃい」と答えてくれたのです。
「人形の魅力もありましたが、弟子入りを決意した一番の理由は、師匠の人柄に惹かれたからかもしれませんね」
そうして人形づくりに没頭する日々が始まりました。
「朧月夜が紙粘土細工だったので、てっきり紙粘土を教わるのかと思ったんです。ところが一番始めに渡されたのは、布と針と糸でした。まず『つくってみて』と言われて習ったのが猫の人形だったんです」
それまで特に猫が好きなわけではなく、裁縫もほとんどやった事がなかった小山内さん。それでも戸惑いながらもつくり続けて2ヶ月後、そのつくった人形のひとつが萩工房の軒先から売れたのです。運送会社を退職し、退路を断っていた小山内さん、「生活のためにもやり続けるんだ」と腹が決まった瞬間でした。

■お客様の声が大事
一年ほど師事し、その後はとにかくつくり続けてきた、という小山内さん。職人として人形づくりに没頭すると同時に、百貨店などでイベント販売をする時は、今でも必ず販売の店頭に立っています。
「はじめの頃は、もちろん厳しい意見もいただきました。でもお客さんと直接お話しをし続けたのは本当に良かった。今つくっている〝わるねこ〟の顔立ちも、お客さんとの会話から生まれたものなんです。だから必ず販売は自分の手で行うようにしています」

■もっともっと上手くなりたい
「かけ出しの頃につくっていたものは本当にヘタだったと思いますが、そこから16年やり続けてきて、それなりにつくれるようになってきた。これからも少しずつかもしれませんが、上手くなっていきたいですね」
以前は普通に嗜んでいたという、パチンコやタバコ、趣味のゲームなども今は全くやらなくなったそう。
「今の生活は、ねこづくりと散歩。それが全てです」
年間一千体ものねこたちをつくっている小山内さん。その手腕の今後にもますます注目です。

その他、最新の情報は、『一歩二歩にゃんぽ…(萩工房ブログ)』やFacebookページ『萩工房 わるねこ』をご覧ください。

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